一般演題9 集中治療

一般演題
座長: 中島 高博(鹿児島大学病院)
鈴木 壮彦(友愛医療センター) 

 

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〇酒井 勇貴、田中 志緒里、古謝 侑奈、福永 祐介、諸岡 大樹、佐藤 大佑、木塚 晋輔 、木村 崇、西村 徳泰、平方 希三生、市山 智義、田中 淳、山下 佳雄
佐賀大学医学部附属病院 MEセンター

【はじめに】 当院では平成24年から病院再整備に伴い, ユニバーサルデザイン化を推進している. しかし, 構造的観点から全て解消されるには至っておらず, 問題点も浮き上がってきた. 今回, 体外式膜型人工心肺装置(以下ECMO)装着患者の搬送中に搬送用エレベーターとフロアの隙間にECMOの車輪が落ち込み, 搬送の障害となるインシデントが発生したため, その原因調査と改善策について報告する.  

【方法】 ECMO装着患者の搬送経路上に搬送の障害となる段差等の再確認, および架台の仕様構造について調査を行った.  

【結果】 調査の結果, 搬送経路上に搬送の障害となりうる段差等は発見されなかった. しかし, エレベーターに約30mmの間隙, フロアとの段差が約10mm存在し, 車輪が落ち込みやすくなっている. 院内の同規格の他エレベーターに比べて間隙, 段差が大きいことが確認された. 
また, ECMO架台の車輪について検証したところ, 人工呼吸器やIABPなどの移動用架台の車輪サイズが直径125 mmだったのに対し, 直径100 mmと小径であった.  

【改善】 発見されたエレベーターの間隙に対しては, まず当院施設課に改善依頼を行い30 mmから10 mmへ縮小することができた. さらにフロアとの段差に関してもエレベーターのスプリングを補正することとなった. 一方, ECMOの車輪に対しては, 段差の乗り越えやすさ, 重心のバランスを考慮し, 直径100 mmから直径125 mmのものへすべて変更した.  

【考察】 一般的に車輪径を大きくすることで乗り越えられる段差の理論値は比例して大きくなる. しかし, 車輪径が増大すると医療機器全体の位置が上昇することで, 重心が高くなり横方向からのベクトルに対して不安定となる. また, 近年では125 mmの車輪サイズを採用している機器が多いことからも選択の根拠とした. ただし直径125 mmが最適かどうかについては, 車輪径のみならず, 車輪数など含めて今後, 検証していく必要がある. 
エレベーターの間隙については, 40 mm以下であれば法律上問題ないとのことだが, 用途や安全性を考慮し適切な選択が求められる.  

 

 

〇梶原 颯介、小田 款文、源田 卓郎、荒倉 真凪、中田 正悟、溝口 貴之
大分大学医学部附属病院 医療技術部 臨床工学・歯科部門 

【はじめに】 劇症型心筋炎は血行動態の破綻を急激にきたし, 致死的経過をたどる急性心筋炎である. 両心不全を来たすことがあり, 機械的補助によるフルサポートを行うためECMOの脱血不良は致命的である. 今回, 劇症型心筋炎に対しECPELLAを導入し, ECMO脱血不良にてカニューレの交換を行った症例を経験したので報告する.  

【症例・経過】 70代男性. 心窩部痛にて近医受診し, 心エコーで左室の高度壁運動低下を認めた. 心筋炎が疑われ機械的補助導入目的で当院に救急搬送された. 搬送後, 体外式ペースメーカー留置時にCPAとなり蘇生目的でECMOを導入した. その後, 手術室にてIMPELLA 5.5 を導入しICUに入室した. 入室後, 右心不全を認め, ECMO流量の増加を試みたが原因不明の脱血不良にて増加できなかった. 翌日, 肺うっ血を認め, 脱血カニューレを右大腿静脈CAPIOX 21Fr(テルモ)から右内頚静脈HLS 23Fr(GETINGE)に変更した. 交換後からECMOは高流量補助が可能となり, IMPELLAはベント目的とした. 次第に肺うっ血, 心機能改善しECMO, IMPELLAの順に抜去し, 第23病日目にICU退室となった.  

【考察】 当院のECPRでは, 硬くて挿入しやすいCAPIOXカニューレを第一選択としている. このカニューレは, サイドホールが少ない形状でエンドホールから多く脱血する特性を有し, 十分に配慮してカニュレーションを行った. 多くの症例はこのカニューレで十分対応可能であるが, 本症例ではカニューレ先端が外側を向き血管壁に吸い付くことで脱血不良を来たしていたと考える. 新規脱血部位には, 循環停止時間を最小限にするため右内頚静脈を選択し, HLSカニューレを挿入した. このカニューレは, サイドホールの近位部が最も脱血するため, 近位部が右心房に位置するように留置した. よって, ECMOの脱血が安定していることにより, 肺うっ血の改善につながったと考える.  

【結語】 ECMO脱血不良によりカニューレ交換を行った. それぞれの特性を把握し状況に応じてカニューレを選択することが重要である.  

 

○佐々木 俊輔1)、内村 鴻一1)、河村 将熙1)、天神原 崇1)、吉田 圭介1)
山香 修1)、松島 慶央2)
1)久留米大学病院 臨床工学センター
2)久留米大学病院高度救命救急センターCCU

【背景】 心原性ショックは未だ致死的な病態でありECMOなどの機械的循環補助を必要とすることがあるが, ECMOを必要とする患者には時間的猶予がなく, 長距離搬送は心停止のリスクを伴う. 当院では県南のECMOが使用できない地域の病院と連携し, Dr.Heliの機動性を活かしたPrimary ECMO Transportの運用を2022年度から開始しており, 経験した症例を報告する.  

【症例】 突然の前胸部痛を契機に発症した急性心筋梗塞による心原性ショックの症例であり, 循環が維持できないことからECMOが必要と判断され当院へ出動依頼があった. 病院間直線距離は30kmで救急車では約1時間の搬送時間が必要となる地域であり, 転院搬送は心停止リスクが高いと判断された. 前医で気管挿管とIABP挿入下に血行再建が行われているのと並行して, Dr.Heliで医師・臨床工学技士とECMO装置が派遣された. 血行再建後も循環動態の改善は認められず心室頻拍の出現もあったためV-A ECMO導入して当院搬送となった. 転院後の経過も良好であり第23病日に紹介元病院へ転院となった.  

【考察】 Dr.Heliの主な目的として医療資源を短時間で現場に投入することで傷病者の救命率や後遺症軽減につなげる役割がある. 本症例においても通常の転院搬送と比較して前医での救命処置を継続しながら, 必要な医療資源を短時間で現場に投入することが可能であった. また, ARREST trialでは, 十分に組織化された経験を積んだシステムであれば, 早期ECMO導入により心停止患者の生存率が有意に向上することが示されており, ECMOのない地域での救命率向上のために本システムの成熟が望まれる.  

【結語】 心原性ショック症例に対するPrimary ECMO Transport症例を経験した. 安全かつ迅速な運用を目指し症例の蓄積を行っていきたい.  

○黒木 沙紀、後藤 敬志、吉海 啓大、山崎 竜魅、江川 雄紀、田中 亮太、宮原 史和 、小田 裕一、谷口 正彦、矢野 武志
宮崎大学医学部附属病院 ME機器センター 

【はじめに】 VV-ECMO(Veno-Venous Extracorporeal Membrane Oxygenation)は, 重症呼吸不全に対する呼吸補助を目的に施行され, 症例によっては数カ月の長期管理となる. 一般的にECMOの回路交換では, 接続部を離断・再接続するため循環を止めなければならない. 今回, 肺移植待機患者の長期VV-ECMOにおいて, Y字回路を使用し循環を維持したまま12回の回路交換を施行したので報告する.  

【症例】 40歳代女性, 身長160㎝, 体重52. 1kg, BSA1. 53㎡. 特発性胸膜肺実質繊維弾性症, 肺高血圧症, 右心不全増悪によりICUに入室した. 同日に人工呼吸器管理を開始したが, 循環不全をきたしたためVA-ECMOを右大腿静脈に脱血管21Fr, 右大腿動脈に送血管16Frを挿入し導入した. 入室9日目, 循環不全が解消されたため送血部位を右内頚静脈18Frに変更し, VV-ECMOへ移行した. 入室25日に, 感染疑いのため, 左大腿静脈脱血21Frへ変更した. その後, 意識状態が回復したためVVECMO補助下で肺移植待機の方針となった. 本症例では, 長期管理を視野に循環を維持したまま回路交換を行えるよう予め脱血側・送血側にそれぞれY字回路を組み込んだ. Y字回路と利用することで循環を維持した状態で交換を行うことが可能となった. 回路交換時は, CEが主体となり医師, 看護師立ち合いのもと行った. 長期間にわたりVV-ECMO管理を行ったが, 入室190日目で脳出血を発症, 入室197日目で永眠された.  

【考察】 長期間のVV–ECMOにおいて, 既製品の回路にY字のパーツを組み込むだけで, 循環補助を中断することなく12回の回路交換を安全に実施できた. ただし, Y字回路の片枝は, 回路交換時以外使用しないため, 血液が滞留し血栓ができやすい状態であった. そのため, 回路交換時は血栓を除去する必要があった.  

【結語】 Y字回路を接続したことで, VV-ECMOを維持した状態で回路交換を12回行い, 188日間のVV-ECMO管理が安全に実施できた.  

 

○永野 裕之、矢谷 慎吾、塩屋 正昭、森 雅彦、草野 公史、値賀 博章、石田 信吾
地方独立行政法人 佐世保市総合医療センター 医療技術部 臨床工学室

【緒言】 人工心肺(CBP)を用いた開心術には術後感染症などのリスクがあり, 急性腎障害(AKI)は主要な合併症の一つであり, その発症頻度は15~30%程度の頻度とされている. 
また血液浄化療法を導入した場合の死亡率は50%に達するともいわれており, 回避すべき重篤な合併症である. AKIを発症する機序は様々であるが, 今回当院におけるCPBを用いた開心術ではどのような因子がAKI発症に関与するかを後ろ向きに検討を行った.  

【対象と方法】 20201月から20233月の期間. 
当院でCBPを用いて開心術を行った196例を対象とし, 人工血管置換術および維持透析患者を除外した. 
AKI発症と判定する定義としてAKI診療ガイドライン2016」を用い, KDIGO診断基準(48時間以内にCre値0.3mg/dl以上増加した症例)を用いた.  

【検討項目】 体外循環時間, 大動脈遮断時間, 冷却時間, 復温時間, 最低灌流圧, 最低Hb値, RBC, FFP, PC, 酸素供給量(DO2), これらに加えてCBP中の尿量を検討項目とした.  

【結果】 全196例中, AKIは31例(15%)に認めたがCRRT導入に至った症例は無かった
体外循環時間, RBC・PC輸血量はAKI群で有意に高く, 冷却時間は非AKI群に比して, 有意に短かった. その他の検討項目では両群に有意差は認めなかった.  

【考察】 本検討では術式による体外循環時間が長いことによる異物接触時間の延長と輸血に伴う免疫反応などが起こることによって, 今回のような結果が得られたのではないかと考えられた. 
しかし, 短時間の冷却時間はAKI発症要因との関係を明らかではなく, 体外循環前の体温や入室時からの体温変化などが今後の検討課題であると考える.  

【結語】 開心術におけるCBP中のAKIリスク因子として, RBC・PC輸血量, 体外循環時間, 冷却時間が同定された.  

 

矢野 元基1)、矢野 宏貴1)、藤本 照久1)、川崎 徹也1)、本田 浩一1)、大石 一成2)、松本 敏文3)
1)国立病院機構 別府医療センター 統括診療部手術部 ME機器管理室
2)国立病院機構 別府医療センター 統括診療部手術部 麻酔科
3)国立病院機構 別府医療センター 統括診療部手術部 消化器外科

【背景・目的】 当院はCOVID-19指定重点病院として2020年より患者受け入れを行っている. しかし現在までCOVID-19患者に対してV-VECMO(以下ECMO)導入経験がなく, スタッフより不安の声が多くあった. 今回, 多職種によるECMO導入から管理までを共有する目的でシミュレーションを実施したので報告する. 

【方法】 循環シミュレーター回路を作成し, ECMO管理時に使用するECMO付属タブレットは仕様変更を行った. シミュレーション対象職種は麻酔科医師(以下Dr)・ICU看護師(以下Ns)・放射線技師(以下RT)・臨床工学技士(以下CE)とした. シミュレーション後, 参加者を対象にアンケートを実施した. 

【結果】 シミュレーション参加者は19名. 循環シミュレーター回路は人工心肺回路を用いて作成した. ECMO付属タブレットでは, トラブルシューティングや実測値が視覚的に見やすいように変更し, 管理方法などを共有した. 多職種で実施したことで, 多角的な視点の意見や提案を得ることができた. シミュレーション後のアンケート調査では, 実際の機器や回路・物品を使用したことでイメージ化され不安が軽減されたとの声や, 定期的にシミュレーションを行って欲しいなどの意見が挙げられた. 

【考察】 COVID-19症例のECMO導入は少数の人員で行うため多職種との連携が非常に重要である. Dr・Ns・RT・CEがチームとして知識を共有し, 連携することでトラブルなくECMO導入・管理が行えると考える. 問題であったスタッフの不安感もシミュレーションの回数を重ねることで解消されると考えられた. 

【今後の展望】 個々の知識・技術の差が大きく, ECMO管理に習熟したスタッフの数を増やしていくことが求められるため定期的にシミュレーションを行っていき,どのスタッフが対応しても質が落ちない医療体制を整えていきたい. 

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